17. 日欧EPA大枠合意を受けて…。~グローバリゼーションの時代に、日本の企業、団体はどう世界と向き合ってゆくのか?~ | 株式会社 鈴木商会

17. 日欧EPA大枠合意を受けて…。~グローバリゼーションの時代に、日本の企業、団体はどう世界と向き合ってゆくのか?~

このコラムが執筆されている2017年7月7日は、九州北部が豪雨の甚大な被害を受け、現場では懸命な救助活動が展開されている最中である。

 そんなさ中、災害対策の陣頭指揮を、副首相である、麻生太郎に任せ、首相安倍晋三はブリュッセルに旅立った。

 加計問題における野党からの追撃を振り払うかのように、そして、また、豪雨災害に対する救助活動の先頭に立つことを麻生に任せてまで、一体、安倍は何をしにブリュッセルに出かけたのだろうか?

 6日の夜のロイターによると、“ブリュッセルで欧州連合(EU)のトゥスク大統領、ユンケル欧州委員長と共同記者会見を開き、経済連携協定(EPA)交渉が大枠合意に至ったと正式表明した。”ことが明らかになった。

 

以下、ロイターの記事から転載

 今回の大枠合意を受け、ワインやチーズなどの輸入品にかかる関税引き下げの恩恵を受ける国内流通企業や輸入品の取り扱い企業は消費拡大に期待感を高めている。

 

イオン傘下のイオンリテール、岡崎双一社長は「日欧EPAの対象となっているのは、われわれの強化品目。ワインは非常に追い風になる。積極的なセールを仕掛けたい」と述べた。

キリンホールディング傘下のワイン事業会社メルシャンの代野照幸社長も「関税が撤廃になることで、日本のワイン市場全体について、広がる可能性があるのは好ましい」と評価する。同時に「日本ワインについては、関税が即時撤廃となったことで中小ワイナリーへの影響は懸念されるが、引き続き畑の拡大や日本ワインならではの繊細で洗練された味わいの高品質なワインを造り、国内外へ情報発信し評価を高めることで、日本ワインの普及を目指していく」と語った。

<自動車分野は影響軽微>

乗用車の関税が協定発効から7年後に撤廃される自動車業界では、日本自動車工業会の西川廣人会長がEU市場での公平な競争環境が確保されることを「大いに歓迎する」などとするコメントを発表。「本協定を活かし、お客様のニーズに合った商品を幅広く提供する」としている。

ただ、専門家の間では「影響は軽微」との見方が多い。SBI証券の遠藤功治アナリストは「ポジティブではあるが、影響はきわめて限定的」と指摘。「すでにEUからゼロ関税を勝ち取っている韓国勢には対抗できるかもしれないが、一般的に日本車が欧州で買われていない理由は価格でないことが多く、関税分を値下げしたとしても、いきなり日本車の需要が大きく増えるとは思わない」と分析する。

マッコーリー証券(東京)のアナリスト、ジャネット・ルイス氏は「欧州は成長市場ではないため、日本車メーカーが突然『欧州に攻勢をかけたい』ということにはならないだろう」と予測。メーカー各社の拡販努力は中国やインド、ASEAN(東南アジア諸国連合)など成長が期待される市場にとどまるだろう」との見方を示した。

<出典:ロイター 日欧EPA大枠合意、首相「国内対策を指示」 関税下げに企業期待>

http://jp.reuters.com/article/japan-eu-epa-idJPKBN19R1EQ

 ワイン好き、チーズ好きの筆者にとっては歓迎すべきことのように感じるが、実はこの協定の合意は様々な問題を孕んでいる。

 例えば、折角、ワイン用葡萄の品種開発やテノワール=(葡萄栽培の土壌)の最適化などを行ってきた日本の醸造家たちの努力が、再びワインの本場から輸入された商品に押されることになるし、ウォッシュ、アンウォッシュの両カテゴリーにおいてまだまだ多くの種類のチーズの商品化が日本ではなされていないことを考慮すれば、日本の乳製品メーカーや畜産業は黒船の到来に壊滅的な打撃を受けるかも知れない。

 日本のワインもチーズも品質的には高いけれども、海を越えて本場で戦うとなった際には、価格面での競争力が遥に劣るし、「価格の割には・・・?」という評価を受ける可能性が高い。

 ヨーロッパにおけるこうしたEPA合意や環太平洋エリアにおけるTPP合意は、生活者観点からすれば、諸外国の品質の高い、農産物や食料加工品、生活消費財などを関税抜きで安く手に入れることが可能になるが、高い関税を障壁として、国内需要を担保してきた日本の農家、畜産家、メーカーにとっては大きな打撃になる可能性もある…。

 

高い関税をかけ、保護主義的姿勢で守られてきた日本企業

 

 加工貿易立国として、世界各国における対外輸出商品の供給、消費を促すことで外貨を獲得し、成長、発展を遂げてきたが、経産省や財務省が国策として法整備を行い、逆に輸入製品に対しては高い関税をかけ、外国製品の価格競争力をはく奪し、なるべく国産国消=内需の拡大へ導くべく国内メーカー、国内農家、食品加工会社、畜産業者を過剰に保護してきた。

 そもそも20世紀バブル崩壊以降、日本のメーカーの国内生産高は徐々に低下し、ASEAN諸国に生産の拠点を移すドーナツ化現象が頻発している。

 それは、まず、NICs諸国の台頭を許し、日本の家電メーカーであるSONY、三菱、東芝、ナショナル=(現パナソニック)、シャープ、三洋電器などは中国、韓国、ASEAN諸国の猛追を受け、徐々に国際競争力を失ったことは、前回のコラムでも述べた通りである。

 このEPA合意、そして今後加入予定のTPPによって、ヨーロッパ各国の家電製品や自動車等の輸入が増し、更に日本のメーカーが打撃を受けるのではないか?という危惧は、財界の一部から上がっている。

 一方、覇権国家であり、世界の警察、世界一の経済大国であるアメリカはこの動きに逆行し、保護主義的政策を強め、日本製品に対して更なる高い関税をかけ、日本製品の輸入を阻む動きに出ている。

 ヨーロッパからは、安い商品が流れ、お得意様だったアメリカが日本製品の輸入、消費を拒む…。

 となると、今後、日本経済の失速は更に深まるのではないか?という危惧の声も上がっている。

 

 

こうした動きにどう立ち向かえばいいのか?

 

 まず、今更20年以上前にタイムスリップして良質の製品、商品を安い労働力を背景とした低価格で国際社会に供給するということは不可能である。

 であるならば、世界中の富裕者層をターゲットとして、高品質、高機能、高付加価値の高価格商品の供給に舵を切るというのも、一つの施策であるが…。

 これは実に危うい戦略なのである。

 ひとつそれが失敗した事例を紹介しておくことにする。

 ここで例に挙げるのは、ベトナムでの事例…。

ベトナム政府は高速新幹線の発注を、日本のJR東日本にゆだねるか、中国の国策企業に任せるか、かなり迷ったもよう…。

しかし、結果として、ベトナム政府は“高品質、高付加価値、高価格”のJT東日本が提供する新幹線ではなく、“品質はそこそこ、付加価値は希少、とにかく安価!”という中国国策企業が提供する新幹線を選択する。

さほど国の財政事情が富んではない、ベトナムとしては、やはり価格で安く、望んでもいない付加価値や品質が付加されるものよりも、

“そこそこの性能機能でそこそこの価格”の新幹線のほうが選びやすかったというわけである。

さらに日本国内に目を移すとその消費傾向にも表れている

今、流通小売りで厳しい情況に立たされているのは、高級ブランド商品や高付加価値、高価格商品を扱う、百貨店やデパート…。

このデフレ経済と実質賃金の伸び悩み、さらには消費税8%への増税で家計における可処分所得は減少し、百貨店やデパートでの買い物よりは、スーパーやホームセンター、ファストファッションの衣服販売店や通販総合販売での買い物に大きく傾倒し、“高品質、高付加価値、高価格”の商品は実に厳しい戦いを強いられている

でも、本来であれば、日本のお家芸である、“高品質、高付加価値、高価格”商品が需要を伸ばす筈なのに、なぜその傾向がみられないのだろうか?

その要因は、以下の2つにある。

 

“高品質、高付加価値、高価格”商品が伸びない理由 その1 マーケティング施策

 

今の経済環境や市場動静を見極めれば、高品質、高付加価値、高価格商品やサービスの需要はとても伸びることなど、予測できない。

であるならば、高品質、高付加価値、高価格であることを売りにするのではなく、それらの商品やサービスがどれだけ消費者の生活に寄与し(=機能的価値の醸成)、どれだけ生活者の気分を上々にするか?

(=情緒的価値の醸成)に寄与するか?という観点で、

それらの商品やサービスの“売り”を訴えてゆかなければならない!のである。

つまり、機能や価値、価格の高さを売りにするのではなく、

どれだけ、日々の生活の“質の向上に寄与”するか?

“便利にするか?”

“効率化、省力化できるか?”

を売りにすること、

さらに、上質な気分を味わうのに、

どれだけその商品が寄与するのか?

ということを生活者の方々に説いてゆく必要がある。

ここで、2つほど高品質、高付加価値、高価格商品の成功したマーケティング事例をご紹介しておく

一つ目は、音声認識サービスを利用したテレビ。

この商品が、“高品質、高付加価値、高価格”であることは言うまでもありません。

でも家電製品店の販売員の方やメディア露出の際に、それを売りにするのではなく、“リモコンがなくても操作でき、手がふさがっていてもスイッチをONにでき、声に出すだけで自由に番組を選べる!”

という利便、効率、省力化にフォーカスしたPR戦略に特化してかなりの成果を上げている。

その機能を駆使するおかげで生活は一つランクが上の、“執事のように従順なテレビを得ること!”による精神的満足の高さも重ねてアピールしています。

二つ目も同様な音声認識サービスを用いた、自動ロボット型掃除機。

こちらも同様に利便、効率、省力化にフォーカスしたPR戦略に特化し、さらに音声で会話するその機能から、まるでお友達のような関係を維持できるパートナー家電を売りとすることで、やはり“精神的な満足”や“毎日の生活におけるFun!”の醸成というコミュニケーション戦略に打って出ることで、成果を出している。

つまり、高品質、高機能、高価格の商品が、どれだけ利便、効率、省力化に寄与し、どれだけ精神的な満足、毎日の生活への喜びに寄与するか?を訴えることがマーケティング戦略における重要な要素といえるのである

 

“高品質、高付加価値、高価格”商品が伸びない理由 その2 商品を生産、供給、販売する“売る側の姿勢”!

 

高機能、高付加価値、高価格商品を販売、提供する側の人々はいつもこのようなことを口癖にしている。

“うちの商品は質がいいんだから、一度、試してもらい、購入してもらえば、必ずほかの商品との違いを理解してもらえる!”と…。

それ、大きな誤り。

いや、勿論、それは事実かも知れないのだが、そういう機会を積極的に醸成する必要がある。

高機能、高付加価値、高価格商品を販売、提供する側の人々のマインドはいつも“待ち”…。

接触機会や試供体験の場を積極的に創造する姿勢に積極性が見られず、まるで、“銭湯の番台のおばちゃん”のように指をくわえてただ黙って来客を待つだけ!

それだけ、商品サービスに自信があるなら、積極的にその商品やサービスと顧客との接点をつくるべく、接触機会や試供体験の場を積極的に創造する姿勢が必要!

つまり“待ち”の姿勢ではなく“攻め!”に転じる、

マインドの変化が必要なのである。

今まで国策によって保護を受け、護送船団方式で落ちこぼれはなんとか救われてきた日本の生産者たち。

 けれど、激烈な国際競争に晒される現実を考慮すれば、日本のメーカーや生産者たちは実に過保護な状況の中で、グローバリゼーションへの対応を怠ってきた。

 農協に保護された農産者しかり、財務相に保護された金融機関しかり、経産省に保護されたメーカー各社しかり…。

さて、高機能、高付加価値、高価格商品いわば日本製品、日本の商品、日本の農産物が売れない理由…。

それは商品やサービスに問題があるわけではなく、

“売り方”、もしくは“売る側のキモチ”に誤りがある…。

それらを是正することで、高機能、高付加価値、高価格商品が売れる可能性もある。

 つまりマーケティング戦略とマインドの是正で国際競争に打って出る。

 こういう意識変革が重要なのである。

 そして、今はインターネット時代。

 サイトで商品を並べ、決済機能さえ付加すれば、誰もが、通販サイトを経ちあげることが出来、世界中を相手に商売できる時代である。

 

一方、市場ニーズや経済環境を見極め、”高機能、高付加価値、高価格商品”にこだわることなく、“品質はそこそこ、付加価値は希少、とにかく安価!”という商品やサービスの開発も必要…。

市場や経済環境は生き物であり、それに応じた商品戦略も重ねて重要といえるである。

 とはいえ、もはや政府や行政に依存して、それらを充てにしたビジネスの手法に依存することは極めてリスクが高い。

 先のEPA合意や今後のTPP加入により、“グローバリゼーションにおける生き残りをかけたパンドラの箱”が開封されたと覚悟して、国際感覚、攻めの姿勢、マインドのリセットを図りながらビジネスに勤しむことがこれからの経営者に求められる姿勢なのである。

 

東京都台東区で複合機・OA機器格安販売の会社/株式会社 鈴木商会

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